同時死亡の推定の相続
同時死亡の推定とは 、例えば飛行機事故等に巻き込まれ、複数人死亡したことは判明しているが、死亡の前後が証明できないときに、これら複数人の者は、同時に死亡したと推定することを言います。 民法32条に明文規定があります。
ここで、条文の意味をより理解するため、推定とみなすの違いを説明します。法律上の推定とは、反証がなければそのように判断するが、反証があり、事実でないことが明らかになれば、その反証で証明された結果に従う事を言います。
これに対して、みなすとは、反証を許さず、そのまま事実として認定することを言います。
以上の知識を前提に同時死亡の推定を考えると、先述のように飛行機事故等で同時推定がなされた事案であっても、生存者の証言や確かな周囲の状況で同時に死亡していないことが証明されれば、その反証で明らかになった事実に従うことになります。
相続は、被相続人の死亡と同時に開始され、特別な手続きを行うことなく、当然に相続人が被相続人の財産を承継しますが、死者に相続権はないので、相続人は、被相続人の死亡時点で生きていなければなりません。この結果、同時死亡の推定がなされると死亡した人は相続人になり得ないことになります。
例えば、夫婦と子供1人の家族で、父親と子がある事故で同時に亡くなったと推定されれば、死亡した夫と子供の間に相続はないことになります。
従って、死亡した被相続人である父親の財産は、父親の両親が健在であり遺書がない場合は、法定相続分妻が2/3、両親が1/3を相続します。
また、被相続人の両親が既に亡くなっている場合で兄弟姉妹がいる場合は、妻が3/4、残りの1/4兄弟姉妹が相続します。
しかし、僅かな時間でも父親の方が子供より早く死んだことが証明されれば、父親である被相続人の財産はその子が相続し、その死んだ子の財産を母である被相続人の妻が相続します。
つまり、この場合は、被相続人の財産の全てを妻が相続することになります。
このように、同時死亡の推定がされるか否かは、相続に重大な影響を及ぼします。