自筆証書遺言の知識2
氏名の自書要件について。
自筆証書遺言に署名する氏名は、戸籍上の氏名と同一である必要はありません。
通称、雅号、ペンネーム、芸名などであっても、その自書された署名が、遺言者と特定できる場合であれば、有効な自筆証書遺言になります。
また、苗字・名前を合わせて署名することが通常の姿ですが、どちらか一方の署名でも、遺言者が特定できるなら有効になります。
押印の要件について。
原則として、押印のない遺言書は無効です。
ただ、押印は実印による必要はなく、認印や、いわゆる三文判でも構いませんし、指印を有効とした判例もあります。
遺言書も契約書等にみられるように、何枚もの枚数に及ぶ場合があります。
このような場合は、契約書の同様に割印をすることが望ましいとされていますが、割印を押すことは、自筆証書遺言の法定の成立要件ではないので、割印が押されていなくても、自筆証書遺言は、無効ではありません。
また、自筆証書遺言の押印要件は、遺言者本人が押印することを要求していますが、遺言者の要請で、遺言者の面前で他者が遺言書に押印した場合は、例外的に有効とされます。
自筆証書遺言に厳格な要式性がものとめられる趣旨は、遺言者の意思を正確に残し、偽造変造を無くすためなので、遺言者の意思が正確に介在していれば、他者が押印した場合まで、一律に無効にする必要はないからです。
加除その他の変更について。
自筆証書遺言は、ワード等で書く場合と異なり、訂正に手間がかかります。
最初から書き直すのは面倒です。
そこで、遺言書に加除その他の変更を加え、遺言書を完成させる場合があります。
そんな場合は、遺言者がその加除した場所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名し、さらにその変更の場所に押印する必要があります。
しかし、実務上の一般加除・変更では、変更された場所に押印し、証書の欄外に訂正した旨を付記して押印する方法が採られています。
この点では、遺言の訂正の方式は、加除変更方式に比べて厳格な方式を要求していると言えますが、判例は、要式性の緩和に向かっていると言え、加除・変更の方式に従わない遺言書を有効としたものもあります。