遺言能力
遺言は、亡くなった被相続人の最後の意思を法的に実現する法律行為で、この内容は、財産関係や身分関係に影響を及ぼします。
そこで、遺言を有効に行うには、物事に対する一応の判断ができる意思能力が欠かせません。
この遺言を有効になす能力を遺言能力と呼んでいます。
民法の条文には、「遺言者は、遺言をするときにおいてその能力を有しなければならない
と規定されています。
遺言能力の正確な定義は、「自分がなす遺言の内容及びにそこから発生する結果についての法的効果を判断出来る能力
のことです。
この遺言能力を欠いた遺言は、法的には無効となるので、遺言能力の存否は、利害関係人にとって極めて重要な遺言要件と言えます。
例えば、一般的に遺言は、判断能力が多少衰えた高齢者の方が作成することが多いので、遺言能力が法廷で争われることも多いのです。
民法の原則では、未成年者、成年被後見人(公正証書による登記が必要)、被保佐人、被補助人と言う形で能力を欠く程度によってその方の行為能力の一部を制限していますが、遺言の場合は特別に、条文に規定された意思能力ある者に限定して、単独で遺言出来るとしています(遺言能力あり)。
遺言では、1.未成年者でも、15歳に達していて、かつ、意思能力が認められれば法定代理人の同意なしに単独で遺言が出来ます。
2.成年被後見人であっても、その者が、意思能力を回復している情況にあれば、意思能力が回復したことを証明する医師2人以上の立会の下で、有効な遺言が出来ます。
3.被保佐人は原則として遺言能力が認められ、遺言するにあたり、保佐人の同意は必要ありません。
4.さらに意思能力の高い被補助人も遺言能力が認められ、遺言するに際して補助人の同意は不要です。
尚遺言は、遺言する時にこの能力と要件が具備されていれば有効なので、その後に認知症等になり亡くなる時点で遺言能力を失っていても、遺言の法的効果は失われません。