祭祀承継者の指定
祭祀財産とは、位牌・仏壇・墓地・墓石など先祖のまつりごとを催すために必要なもののことです。
相続の原則は、相続人間での分割ですが、祭祀財産が分割相続されると、祖先の祭祀をする時に不都合が生じてしまうので、民法には、「系譜、祭具及び墳墓などの所有権は、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継し、相続の対象にはならない
との明文規定があり、
祭祀財産は、祭祀を主宰者する者である祭祀承継者に、相続財産とは区別され、この者一人に承継されます。
条文にある系譜とは、系図やこれに類する書面等をいい、祭具とは、仏像、位牌その他礼拝又は祭祀の用に供するために必要な用具で、仏壇、神棚およびこれに付属した用具一切が含まれると解されています。
ただ、仏間専用の部屋でも、居住建物の一部になっているものは、祭祀財産に含まれません。
また、墳墓とは、遺体や遺骨を葬ってある墓碑、埋棺、霊屋などの設備のことです。
祭祀承継者の選任方法に特別の制限はありませんが、通例は、
1.被相続人が遺言等で指定した場合(被相続人が口頭でも書面での指定も可)
2.被相続人の指定が存在しない場合は、その地方の慣習に従って承継者が決まるとされますが、慣習の存在自体が曖昧で争いの原因になっています。
3.慣習が明確でない場合は、家庭裁判所の調停・審判で決定します。
家裁では、被相続人と相続人の身分関係や生活関係、祭祀継承に対する意欲・能力、利害関係者の意見等を総合的に考慮して判断します。
民法の条文にもあるように、祭祀継承財産は相続財産に含まれず、相続税の対象外です。
遺産分割協議で祭祀継承者が祭祀継承職務を履行することを理由に相続財産を多めに要求することがありますが、法律上祭祀継承者に遺産を多く分配しなければならない規定はなく、相続人間で協議の上決定する必要があります。
ただ、祭祀に費用は、祭祀承継者が負担するので、遺言で、相続分を多くしたり、生前贈与で、祭祀の費用負担を補てんすることも出来ます。
祭祀継承者に指定された者は、祭祀継承者となり、これを拒むことはできませんが、祭祀承継者が今後如何に祭祀を営むかどうかは、その者の判断であり義務ではありません。
また、承継した祭祀財産を処分することも自由です。
尚、祭祀承継者は、必ずしも相続人である必要はありません。