遺産信託とは
近年、日本における相続や遺言の関心が深まる中、遺言信託が注目されています。
それではこの聞き慣れない言葉、〝遺言信託〟とは一体何のことなのでしょうか。
一言で言えば、遺言信託とは、信託銀行が遺言書の作成・保管から、遺言の相談・執行までの相続に関する総合的な管理を行なう業務のことです。
遺言信託の具体的な業務内容は、
遺言書の作成・保管 、 遺産分割に関する相談 、 遺産の一時保管 、 財産目録の作成 、
遺言内容の執行 、税金面での相談等です。
本来の遺産信託は、遺言者の相続財産を信託会社に移転し、その財産を信託銀行等に管理・運用してもらう制度です。
例えば、被相続人に障害者の子や幼い子といった意思能力や管理能力に欠ける者がいた場合に、推定相続人のことを考えて、遺言者が、信頼できる信託銀行に相続財産を委託し、その財産を管理・運用して得られた収益を相続人(障がい者や幼い子等)に支給することで、遺言者の死後も相続人が安定した生活を送れるような仕組みにしている制度です。
ただ、本来の意味の遺言信託と現在信託銀行等が推進する遺言信託業務は、いささかその業務趣旨が異なっています。
現在の大半の遺言信託サービスは、遺言書の作成支援から保管までを援助する契約と、遺言執行者の指定を受け、契約者(遺言者)が死亡した後も引き続き遺言執行者として遺言内容の実現を遂行する、遺言執行者付き契約の2つが代表的な遺言信託契約の内容です。
中には、遺言者の亡き後の財産を運営管理して、相続人に配当するサービスもあります。
ただ、法律によって信託銀行等が信託業務で引受けられる範囲は財産に関するものだけに規制されるので、当然ながら、相続人の廃除等の身分に関連する事項についての遺言信託がなされてもその信託は無効です。