財産や人物の特定
遺言条項の記載については、遺贈・遺産分割の指定等の財産分配の指定のみならず、遺言執行者や祭祀主宰者等の人物の指定もあります。
民法では、この点について明確な規定を置いていませんが、遺言に最低限必要な特定方法は如何なるものかが問題です。
遺言には、亡くなった方の意思を実現する法律行為なので、遺言者の意思が客観的かつ明確に表現されている必要があります。
もし、相続財産が何か特定できない場合は、遺言条項としても効力は生じません。
また、無効にならなくても、曖昧な遺産の特定では、相続人相互間の勝手な解釈によって、相続人間で争いが起こる可能性が高まると言えます。
そこで、このような相続人間の紛争を回避するためにも、明確かつ客観的な財産の特定が必要です。
例えば、自宅土地建物不動産が相続財産であり、これを「孫に相続させる」と遺言した場合、孫が1人であり、自宅も1件しか所有していない場合は特定されたと言えますが、孫が何人かいたり所有する土地建物が複数あれば、特定されたとは言えません。
遺言書に記載する不動産の特定は、
1.登記情報の証明記録に従って、地番や地目(例えば住宅地)、建物の種類、地積、総床面積、建物の構造(例えば、木造モルタル造り)を記載します。
2.預貯金に何しては、金融機関の名称、支店名、口座の種類、口座番号を記載します。
3.株式は、株式の発行会社、株式の種類(例えば普通株)株数、また、証券取引会社の取り引き口座のID番号やパスワードも記入しているとよいでしょう。
4.債権は、債権額はもちろんのこと、利息、弁済方法や弁済期日、債務者の住所氏名年齢、または、債務者が会社、事業者であれば、その会社名や商号を記入し、更に、その債権が発生した原因や日時を特定して記入します。
5.遺言執行者当の人物の特定では、その人物の指名、生年月日、住所地や本籍地、遺言者との関係やその遺言執行人の職業や肩書等も記入しておくと良いでしょう。